紙の月

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tezuka

満足 紙の月

msg# 1
前の投稿 - 次の投稿 | 親投稿 - 子投稿.1 .2 | 投稿日時 2014/11/17 22:31 | 最終変更
tezuka  長老   投稿数: 486
宮沢りえは歳を重ねるにつれ、真の大人の女優になっていると思う。
この作品では宮沢りえなのに、あの宮沢りえなのに銀行員でぱっとしない愚かなアラフォー女をしっかりと演じていた。
素晴らしい!
主人公の梨花は同僚のベテラン社員から、「今まで専業主婦だったのに、なぜ勤めに銀行を選んだのか?」と尋ねられ、「仕事しているところを見ていてなんかいいなあと思ったから」などと平気で答える。
実際、そのような幼稚な答えを何の疑問もなく平気で口にする人は多い。
また、その答えに何の疑問も感じない人も多いだろう。
宮沢りえ本人はそんな人たちとは真逆の生き方をしている人だと思う。
若い時から逆境を越え、傷つくたびに思慮深く考えることを学び、生きることを真摯に見つめてきた人だと思う。
作品では何をもから駆けていく梨花の姿に彼女の人となりが綺麗に表れていた。
本能のままに流れていく主人公の姿の中に「宮沢りえ」という真逆の生き方をしている女優の姿勢が見えたことに感動できた。
良い女優さんになった。

主人公の心の隙間にお墨付きを与える同僚役の大島優子も上手。
女優としては全体的に地味なので今後、今回のような脇役で光る女優になっていってくれたらなあと思う。

で、宮沢りえと同じくらい素晴らしかったのが小林聡美。
最後の宮沢りえに向けた表情は切なくて必死で最高だった。
あそこだけ観にもう一度行ってもいいぐらい、惚れてしまいそうな表情だった。

主人公がハマる年下男役の池松壮亮は、「海を感じる時」と同じような女の敵ともいえる役柄が上手い!
人づきあいが上手ではなく、夫婦の間ですらしっかりと人間関係の構築ができない梨花の夫の田辺慎一も。

梨花の周りは自分のことしか考えられない人ばかり。
だからこそ彼女は自分に興味を持った年下男に溺れ、弱者を支援して幸福感を得るという行為にハマり、物質的なものの全ての代替物であるお金に支配された。
たったひとり、梨花の不正を見抜いた同僚の小林聡美だけが彼女の本質を見つめて一瞬だけ、二人の気持ちが重なる場面が見事。
吉田大八監督は女性を撮るのが上手だと思いました。
地味な役柄の二人なのに、すごく魅力的でした。
年下男とのラブシーンなんかよりセクシーに見えました。

全体的に、、、なんといっても巨額横領事件のお話しなので、観ていて胃が痛くて痛くてたまりませんでした。
身の程が良いです。人のお金に手を出してはいけません。。。
観ごたえありました。

--
45

onitsuka

なし Re: 紙の月

msg# 1.1
前の投稿 - 次の投稿 | 親投稿 - 子投稿.1 | 投稿日時 2014/11/23 20:26 | 最終変更
onitsuka  常連   投稿数: 63
「紙の月」★
 ネタバレ注意!
 この文章は、映画の内容に、事細かに触れていることがあります。
読まれる方は、そのことを充分ご検討のうえ、お読みください。
 また、ちょっと長めに言わせていただきますと、映画を観るのに前情報を入れるのはいかがなもの“でしょう”?というのが、私の本音です。予告編とチラシと自分の直感、それとあとは、信頼できる友人からの口コミですね、そういう感じで映画を選んで観てほしいです。
 そして、事情は重々承知しているつもりですが、やはり、映画館でCMは流してほしくないですし、見たくないです。それに、映画は、基本、映画館で観るものだとも思います。但し、家計的にきつい人とかは別!これが、ま、私の心からの「叫び」「の・ようなもの」です。
 しつこいと言われることを覚悟しながら、怖さも感じながら、この前置きを書いています。そして、これは、これからここで書く全ての私の映画の感想の前に入れていきたいと思います。何故なら、それが、1映画ファンとしての、何ていいますか、恥ずかしながら、それなりのプライドとかいうものでございまして、また、映画の面白さや色んな楽しみ方を、お伝えし、広めていくことが、映画を再び心から楽しめるようになれた、私の使命?みたいなものじゃないかなと思うからです。
 “蒼”くさいでしょうか?
 あんなに、宮沢りえと池松壮亮のベッドシーンが多いとは思いませんでした。予想しませんでした。宮沢の露出は、ほとんど無いですけどね。
 スローモーション(ハイスピード撮影ともいうらしいです。)の使い方が、そこでの音楽の入り方と“マッチ”していて、最初は、“上手”いなと思って、中盤いいなと思って、最後は、凄いなと思いました。横断歩道を歩く歩行者たちを、ゆっくりスローで撮っていて、なおかつ、自転車に乗っている宮沢は、そこで止まります。
 世の中、もっと、ゆっくりでいいのじゃない?、止まってもいいんじゃない?、という、吉田大八監督のメッセージが、聞こえてくるようでしたし、ラストで、画面を横に走る宮沢のスローは、もう「言葉にできない」素晴らしさでした。
 “スローライフ”は、小昔(調べたら、2001年でした。)からの言葉ですけれど、今こそ必要なのではないかと、監督は“ささや”いて(多分、本当は、訴えたい。)いらっしゃるのではないかと思います。これは、中島みゆきさんの「泣いてもいいんだよ」という曲の歌詞と、メッセージが重なり合います。
 強い、打つような音楽が、何かどこかで聴いたなと思っていたら、「マルサの女」(伊丹十三監督・宮本信子主演、山崎努・大地(ジャック・ニコルソン)康雄共演)のテーマ曲とそっくりなことに気がつきました。あの映画ほどではないけれど、銀行の業務が克明に描かれていて、銀行の“お仕事”って、やはり大変なのだなあと思いました。
 その後、宮沢は、外国(どこの国かはっきりしない)で、高校生?の時、募金活動で助けた男の子が成長した男?と再会して、「青いりんご」をかじります。
 大島優子が、昨年の「スペック」映画版とは、比べものにならない、しっかりした表情をしていました。まるで、別人のようでした。彼女が、“ありがち”な実家近くの公務員との結婚で、あっさり寿退社してしまうのも、これまでのキャラクターが活かされていて、面白かったです。
 池松は、この後、市川由衣と共演の「海を感じる時」が控えていて、楽しみです。
 近藤芳正(「笑の大学」(三谷幸喜作・西村雅彦共演の演劇版DVD、面白い。映画版も観ましたけど、残念ながら、私には今三歩という感想でした…。)が、支店長補佐?という役柄からか、少し中年太りしていて、相変わらずの安定感のある、安心して観ていられる演技を披露してくれています。
 宮沢と、上司役の小林聡美(大林宣彦監督の尾道三部作の第1作「転校生」主演。(尾美としのり、ダブル主演?)は、女対決でした。見えない火花が、飛び散ります。
 序盤から中盤にかけて、眠ってしまったところが何か所かありました。
 「大いなる沈黙…」を観ていなかったら、高校?時代の宮沢が、女子生徒みんなで聖歌を歌うシーンは、“しらけ”ていたかもしれません。あの映画を、勇気をもって、シネマに書いて下さった、会員のSさんに大感謝です。
 吉田監督、メッセージをはっきり言葉にした「桐島、部活やめるってよ」(当会のお二人の方の強い推薦のため、2回レンタルで観まして、2回目で、素晴らしさというか、こういう覚悟をすれば、いい映画なのだと分かって、Blu-rayを買いました。)から、そのあとに、メッセージをひそめた、こんなスッキリした映画を作られたのは正解だと思います。
 宮沢が、パイプ椅子で窓ガラスをたたき割るシーンは、「ドロップ」以上の迫力がありました。
 “行くべきところへ行く”という台詞の潔さも気持ち良かったです。
 宮沢は、ベッドシーンより、スカート(タイトもあり)での後姿のほうが色気があったし、池松から、5万円入りの封筒をもらった時の表情のほうが、もっとずっと色っぽかったです。
 その他。原作の、角田光代は、「八日目の蝉」の暗さよりは、だいぶ明るくなってきています。あの作品も、評価が高いので、もう1回レンタルで観直したのですが、やはり、暗さについていけませんでした。この投稿を、ふっ切れて書けたのは、新作「インターステラー」●と、2,3人の友と、女優Uさんのおかげです。そして、映画って、面白いストーリーを考えて、その中にメッセージをひそませて出来あがった、1点の“うそ”もない、真実のみのアートなのだということに、今頃になって気がつきました。「ぶどうのなみだ」★(これも新作の日本映画)で、それを確信することができました。終
hiro

なし Re: Re: 紙の月

msg# 1.1.1
前の投稿 - 次の投稿 | 親投稿 - 子投稿なし | 投稿日時 2014/11/24 21:23
hiro  管理人   投稿数: 219
 いくらなんでもこのラストは吉田大八監督のアレンジだろうと思った。まるでリドリー・スコット監督の「テルマ&ルイーズ」を思わせる弾け方なのだ。ついでにもう一つ、映画で気になったことがあったので、確認のために、見終わってすぐに角田光代の原作を読んだ。ハルキ文庫版には吉田監督が解説を書いている。

 意外なことに原作のプロローグは映画のラストに当たる場面だ。しかし、映画で感じた主人公・梨花(宮沢りえ)の開き直った能動的な変化はここにはない。吉田監督は当初の映画化の構想について解説にこう書いている。

 梨花の「ほんとう」が再起動するのは全てを捨て、渡ったタイ・チェンマイに於いてだろうとまず考えた。
 だから日本の話は三分の一、残りはタイで逃げ続ける梨花を撮る。イミグレーションを越え、国境地帯をさまよい、最後は武装警察あるいは軍隊による包囲網を突破して走り続ける。立ち止まらないことで不可能を可能にする梨花、映画にするとしたらそれしか考えられないと僕は二回目の打合せでプロデューサーに訴えた。僕と初めて仕事をするプロデューサーはただ微笑んでいた。

 「テルマ&ルイーズ」を想起させられたのも間違っていたわけではなかったようだ。そういう風にしたいという思いを監督は演出でこの終盤に表現したのだろう。

 原作は日常の小さな違和感や不満が積もる様子を梨花だけでなく、その友人についても描いていく。映画ではこの違和感や不満を腕時計のエピソードで象徴している。梨花が夫(田辺誠一)のために買った安いペアウォッチを夫は仕事にしていこうとしないばかりか、経済的優位性を示すかのように梨花にカルチェの時計をプレゼントするのだ。そうした中、梨花は平林光太(池松壮亮)と出会う。銀行の顧客である光太の祖父(石橋蓮司)の自宅で会った後、駅のホームで光太とすれ違い、短い言葉を交わす。そして3度目、駅の反対側のホームで光太を見つけた梨花は光太のいるホームへ向かう。映画はこの後、ホテルに行く2人の場面に移るのだが、ここの梨花の心理が僕には分からなかった。

 原作ではこうなっている。祖父の家で出会った後の帰り道、梨花と光太は世間話をする。その後、銀行の飲み会の帰りに梨花は光太と遭遇し、飲みに誘われる。「よく気づいたわね」と尋ねた梨花に光太は「最初に会ったとき、いいなって思ったから」と答えるのだ。そして光太は銀行に電話をかけて梨花を呼び出し、自主製作映画に出るように頼む。こういう風に原作は梨花の中で光太の存在が大きくなっていく過程を丹念に積み重ねていく。これなら納得できる。

 大急ぎで映画を擁護しておくと、物足りなかったのはこの梨花の光太への思いに関する部分だけで、それ以外はとても納得できた。銀行の支店に勤務するお局様のような小林聡美と若い大島優子は映画のオリジナルのキャラクター。近藤芳正が演じる次長も含めて支店内の人間関係とその業務の描写が実に面白い。そして若い男に貢ぐために1億円を横領した女の転落の話という観客の予想を超えて、映画は最初に書いたような一種の爽快さを感じさせるラストへ到達するのだ。

 梨花の変化のきっかけは光太であったにしても、元々、梨花の内面にあったものが発現したのだという風に、吉田監督は描きたかったらしい。だから梨花と光太の関係の始まりをくどくどと描くことをやめたのだろう。ラスト近く、「一緒に行きますか?」と小林聡美に問いかける梨花のセリフは、一緒に煩わしい日常のしがらみを捨てませんか、と言っているに等しい。吉田監督、うまいなと思う。
haruko

なし Re: 紙の月

msg# 1.2
前の投稿 - 次の投稿 | 親投稿 - 子投稿なし | 投稿日時 2014/12/6 15:29 | 最終変更
haruko  長老   投稿数: 320
映画のラストは原作のプロローグなのだと知らなかったが、外国に逃げおうせることが分かっていては映画としてのハラハラが半減してしまうから、吉田監督のこの逆転シーンは大正解だったと思う。

彼女はただ単に若い男にのめり込んでいっただけじゃない。
夫婦生活の味気なさ、面白みのない変化のない日常を崩してしまいたい、と、知らず知らず思っていた心が彼女の原動力だったのだと思う。
もともとそれ程の金銭欲は彼女にはなかった。

しかし若い男を知り、贅沢を知ってしまった女は、歯止めが利かなくなって行く。
でも、私は彼女を擁護したい。
良かったね、酷い男じゃなくて。
嫉妬に狂う程の男ではなくて最後まで可愛い男だったこと、卑劣な男ではなかったことは救いだったね、、と。

hiroさんの言う「テルマ&ルイーズ」と共通する面白さは初め「どこが?」と思っていたがラストでようやく納得がいった。
車ごと大ジャンプするテルマとルイーズのやぶれかぶれの爽快さは、大きな銀行の窓ガラスを叩き割って逃亡する彼女と確かに似ている。
海外で、全くイメージの違う彼女の赤いワンピースが、もうどうとでもなれ、といった自由の象徴の様で快感だった。

横領しながら美しさを増して行く宮沢りえの演技も凄かったが、クレバーではあるが幸せにはなれない小林聡美の知的な美しさも、罪悪感のない若い同僚も、調子の良い何処にでもいそうな節操のない銀行員も、みんなみんな上手くて心地よかった。

映画はその大部分がキャストの成功不成功にかかっているのじゃないかと思う。
見て楽しい映画では無かったけれど、見て良かったとは思った。
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