残像

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sugio

満足 残像

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前の投稿 - 次の投稿 | 親投稿 - 子投稿なし | 投稿日時 2017/9/3 2:22 | 最終変更
sugio  長老   投稿数: 204
巨匠アンジェイ・ワイダ監督の遺作。
第二次世界大戦後、実在したポーランド人の画家ヴワディスワフ・ストゥシェミンスキ(舌を噛みそうな名前だ!)の晩年の4年間を描いたもの。祖国ポーランドがソヴィエト連邦の勢力下になり、社会主義が徐々に強さを増してきた頃。

オープニングの輝く草原の和やかなシーンから一転、ストゥシェミンスキが部屋でキャンバスに向かって筆を取ろうとすると、スターリンの垂れ幕が窓を覆いキャンバスも部屋も真っ赤に染まり、怒った彼が垂れ幕を松葉杖で破くシーンは、これから始まる物語を抽象的に暗示していてるのかなと思った。

大学教授のストゥシェミンスキは、芸術に政治を持ち込む事を拒み、次第に厳しい弾圧に曝されるようになっていった。やがて、公職を追われ、配給ももらえず、絵画協会の会員証を剥奪され絵具も買えない状況に追い詰められていく。
あらゆる弾圧が彼を苦しめるが、感情をあらわにして激昂したり、抵抗したりはせず、辛抱強く、信念を貫こうとするストゥシェミンスキの姿に深く感銘を受けた。
弾圧の最中、当局員が彼に「お前は一体どっち側か?」と詰問した時、「私は私の側だ」と冷静に言い返すシーンが特に印象的だった。
不屈の信念を貫きながらも、現実的な困窮で生活の活路も見出せず、娘ニカの行く末を案じた時、社会の大きなうねりに翻弄される不条理にストゥシェミンスキの心が迷う感じも繊細に描かれていたと思う。

ニカが自分の元を去って行く時「あの子は苦労するよ」と彼が呟くところはとても切なかった。そして、父の病室で父のために靴の事で嘘をつくニカの健気さにも胸が詰まる。

「人々の生活のあらゆる面を支配しようと目論む全体主義国家と、ひとりの威厳ある人間との闘いを描きたかった。」と言う監督のテーマがしっかり1時間39分に無駄なく描かれていて流石だなぁと思った。

この主人公は、祖国の厳しい検閲を受けながらも、社会主義に抵抗し映画を取り続けた監督そのものにも思える。
ラスト、ショーウィンドウのシーンは切なくて虚しさが募った。

昨年(2016年)惜しまれつつ亡くなったワイダ監督。映画のひとつの時代が終わった感じがすると言ったら言い過ぎだろうか。もっと、まだまだ巨匠の映画が観たかった。
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