牛の鈴音

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前の投稿 - 次の投稿 | 親投稿 - 子投稿なし | 投稿日時 2010/4/11 16:43
tezuka  長老   投稿数: 487
悔しい!と思いつつ、老いぼれた汚ーい牛にじ〜んとしました。
動物の瞳は卑怯です。
何考えてるか判らないけど、何かをものすごく判ってるような瞳に見えるから。
どれだけの知力が、あの頭の中にあるのか知らないけれど、年老いてボロボロの足や長年重い荷物を運び続けて傷ついた体で尚、荷物を引く姿には、「こんな私って、まだまだだわ」と感じずにはおれません。

極力抑えたBGMに、首につけられた鈴の音だけが響いてきます。
お爺さんの奥さんじゃないけど、「あんた!お願いだからこんな老いぼれ牛に荷物なんか引かすんじゃないよっ!」と言いたくなります。
お婆さんの愚痴が笑えるのですが、見ているとホントに笑い事じゃない、そりゃあ毎日愚痴の五つも六つも言いたいわねぇ、と思う暮らしぶり。
隣の畑は機械で耕し、機械で米を植え、収穫しているのに、老いてボロボロのふたりは、二人よりも老いぼれ牛で耕して植えて、手で収穫。
農薬は牛に食べさせる草が毒になるからダメだ!と頑固にお爺さんは拒むし、雑草取りもしょっちゅう・・・・
そのたびに、家から畑までの道のりを、老いぼれ牛でえっちらおっちら行くのです。

世の中との対比やお婆さんの愚痴としての暮らしぶりの違い、という描写はずっとあるのですが、それよりも、とにかく老いぼれ牛と同じ老いぼれお爺さんが、自分にとって作物とは!なんていう立派なポリシーではなく、きっと彼は「最初からそうしてきたからこうするんだ」というシンプルな気持ちで暮らしているのがとても素敵だと思いました。
お婆さんが雑草取りが面倒だから農薬撒いてよ!と言うのに、断る理由が「牛が食べる草が毒になるから」ですもん。
これをこだわりだ有機農法だ、なんて言わないところがいい。
きっとそういうことを、知りもしないんじゃないでしょうか。
自分はずっとこうして暮らしてきた、ただ、それだけ。
そこに余計な解説はしたくないですね。

老いぼれ牛に対しても、可愛がってるんだか何だか、って感じでお婆さんに腹を立てて牛に当たったりするし、薬になるからと牛に食べさせるたんぽぽも「おらっ!」って顔に向けて投げてやる。
それでも友人たちには牛自慢ばかり。
愚痴るお婆さんより、愚痴らず物言わぬお婆さん牛が可愛いのでしょう。

動物との絆を大切に感じて暮らしてきた古い農耕の民のお話でした。
胸に、きゅっ、ときます。

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