東京家族

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前の投稿 - 次の投稿 | 親投稿 - 子投稿.1 | 投稿日時 2013/1/19 17:59
kinsan  長老   投稿数: 276
山田洋次監督の監督50周年記念映画です。

「小津安二郎監督に捧げる」とエンドクレジットにあるように、小津監督の「東京物語」をモチーフにして、そこに山田監督らしい味付けをした作品になりました。

広島の島で生活を送っていた老夫婦が、東京に住んでいる子どもたちに会うために上京します。しかし、子どもたちにはそれぞれに事情があり、東京での生活は老夫婦にとっては必ずしも快適なものとはなりません。

子どもたちが考える両親の歓迎の仕方と老夫婦の考えのずれがあって、そこが微妙に家族のあり方を考えさせられます。

ほぼ「東京物語」と同じ内容ですが、原節子が演じた死亡した次男の嫁の代わりに、蒼井優が頼りない次男の恋人役で出演しています。この恋人が映画の中でいい役割というかホッとする存在になっています。
「蒼井優=原節子」と思っている私には、とてもいい感じの蒼井優でした。現時点で、2013の助演女優賞は蒼井優で決まりです。

この映画、評価の分かれ目は山田監督の作風を認めるかどうかだと思います。
ホッとした一時を過ごしたい方には、お薦めしいたいと思います。

余談ですが、橋爪功と吉行和子が演じた老夫婦を、当初の予定通りに菅原文太と市原悦子が演じていたらどんな夫婦になっていたのでしょう・・・

前の投稿 - 次の投稿 | 親投稿 - 子投稿なし | 投稿日時 2013/1/22 2:47 | 最終変更
hiro  管理人   投稿数: 219
 「あんたぁ、感じのいい人やねぇ」。吉行和子のセリフが心にしみる。その感じのいい人・紀子を演じるのは蒼井優。笑顔が好感度満点で、ぴったりの役柄だ。

 映画は登場人物の名前もほとんど同じなら、プロットもほぼ同じで、60年前の「東京物語」のリメイクと言って良い内容(山田洋次監督はモチーフにした、と言っている)。設定で大きく異なるのは次男の昌次(妻夫木聡)を登場させることだ。「東京物語」で昌次は戦死したという設定だった。

 キネ旬の山田洋次と渡辺浩の対談を読んだら、「息子」(1991年)も「東京物語」の骨格を借りた作品だという指摘があった。ああ、そうだった。「息子」もまた父親が東京に出てきて子どもたちに会う話だった。映画のポイントはフリーターの次男(永瀬正敏)と結婚を約束した聾唖者の女性(和久井映見)の姿にあった。ふらふらしているとばかり思っていた次男がしっかりと将来を見据えている姿に父親(三國連太郎)は安心する。

 「東京家族」はフリーターに近い舞台美術の仕事をしている次男と書店員の紀子の関係が「息子」の2人にそのまま重なる。2人は東日本大震災のボランティアの現場で知り合い、3回目のデートで昌次はプロポーズする。会ってすぐに紀子の人柄の良さを感じ取った母親(吉行和子)は「息子」の父親と同じように安心するのだ。だから、「東京家族」は「東京物語」のリメイクと言うよりも「東京物語」と「息子」を組み合わせた映画と言った方が近いだろう。

 元々は2011年12月の公開を目指していたが、東日本大震災が起きたため、山田洋次は撮影を1年延ばした。現代の日本を描くのに震災がない設定では不自然だからだ。それにしては震災への言及は少ない。父親の親友の母親が陸前高田市で津波に流されたという設定と、昌次と紀子の出会いに設定されているだけだ。山田洋次は被災地に足を運んでいるし、入れようと思えば、いくらでも震災のエピソードを入れられたはずだ。それをやらなかったのは震災のエピソードを入れすぎてはテーマがぶれるとの判断があったためなのかもしれない。

 戦後8年の日本を舞台にした「東京物語」は核家族化の問題を浮かび上がらせた。このテーマは60年たった今も古びていない。しかし、同じテーマを描くだけでは震災後1年の日本を舞台にする意味があまりない。「息子」の細部には当時の風潮を取り入れた同時代性があって感心させられたが、「東京家族」には同時代性や社会性が足りないように思える。それが映画の弱さにつながっている。

 年配の観客が多い映画館は随所で笑い声が上がった後、クライマックスではすすり泣きが聞こえてくる。笑わせて泣かせる大衆性は「東京物語」より上だと思うが、映画の完成度では及ばないし、山田洋次作品としては残念ながら佳作にとどまったと言わざるを得ない。
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